ブルックナーの第九好きには必携
ブルックナーの第九が好きな私のような人間にとってはこれは有り難い記録です。映像は地上波デジタルに慣れた人達からすれば多少荒いかな、と思います(これはDVDの規格上、地上波デジタルの上を行く事はあり得ないので仕方ないらしいです)。EuroArtsから出ているクレーメルによるバッハのDVD、同じくEuroArtsから出ているケヴァントハウス弦楽四重奏団のDVDに比べるとさすがに映像の状態は劣っています。音の状態はほぼ同レベルです。
これは、今まで観て来たブルックナーの第九のDVDの中では文句無しに一押しです。特にアダージョが素晴らしい。このくらいの質を維持しつつ、アダージョではもっと遅いテンポで視聴したいのですが、今そんな事出来る指揮者いませんし、あきらめてます。
人類が永遠に保存すべき世界遺産。
ギュンター・ヴァント88歳、最後の来日時に、我々世界の音楽好きのために残していってくれた感動的ライブの映像。人類が永遠に保存すべき世界遺産ですよ、これは。
曲目は、2つの未完成交響曲。
もう本当に「素晴らしい」としか言葉が出てこないです。このお方は本当に、職人なんですね。右手の指揮棒で大きくテンポを出し、左手の手の表情、顎の動き、目線と眼光で微妙なニュアンスを指示します。テンポを動かす時は、事前に指揮棒でテンポを示してスムーズに移行できるようにします。そのやり方が何とも丁寧、確実。
しかし、朝比奈とかを見たことが無いので、比較は出来ないのですが、式台までは付き添いがいないと移動できないのに、式台に上がったとたん、背中は曲がって痛々しいものの、鋭い眼光が発せられ、凄いオーラが出るというか、もう大変な緊張感です。そして、大きい振りで、淀みなく的確に、1時間近くかかるブル9を振り続ける姿を見ると、もう「凄い」「凄い」「凄い」と一人で唸らざるをえませんでした。
こんなに凄い音楽と演奏がこの世界にはまだあったんですねえ・・・・。
もう本当によぼよぼのジジイなんですよ。ジジイだけを1時間半見続ける訳です。でも、拙者はもう彼の指揮姿の格好良さに時間も経つのが惜しいほど、何時までも見つめ、聴いていたいと思いました。なんという凄い人間だろうか、彼は。
演奏が終わった後、ほら、よくドラマであるでしょう?みんな感動で拍手も忘れるというのを表現するために、しーんとした間を作って爆発的に拍手する演出。あれがね、現実的におこるのです。観客は終わった後の余韻を何時までも楽しむように拍手が出ない。そして、ゆっくり拍手がおきて、鳴りやまない。楽団員が去ってもやまない。ヴァントは5回もカーテンコールに応じる。
この演奏を生で聴けた人は本当に良かったですねえ・・・・。
演奏としては、ブル9は第1楽章の前半に少し乱れがあるようです(良くワカランが・・・・)。「未完成」の方は、一部の隙もない本当の名演です。
2大東京ライブ
ライブ録画や録音ははずいぶんいろいろ見たり聴いたりしましたが、ヴァントのこのライブと、奇跡的に発見されたセルの東京ライブほど心打たれるものはありません。特にこのライブは、指揮に入ったとたん、それまで歩くのもやっとだった彼が、凛とする姿と、敬虔な演奏に心打たれます。未完成は、出だしから涙が止まりません。演奏がすべて終わった後、しばらく続く会場の静寂に、観客の感動がどんなものだったか見ているものに伝わってきます。亡くなったヴァントが私たち日本人に残してくれたプレゼントだと思って一生大切にします。
一期一会の極み
実は最初で最後のヴァントのコンサートがこの10年前、1990年であった。社会人1年目、名古屋市民会館であった。 この時は、ブルックナーの8番であったが、ちょうど北ドイツ放送響とのブルックナー全集の再録に入っていた時、そして、日本でのヴァントの人気が高まってきた時にあたる。この時の本番前に印象深いことを覚えている。ハープ奏者が2人、第2楽章のスケルツオのきれいなソロの部分。これがいまのCDプレイヤーの選択に影響を与えた、いかにはっきりきれいに再生できるかを求めていた時の選考基準。 演奏は生で聴ける大音響と無骨さというかストレートに訴えてくるヴァントの音楽。これはこの2000年のライブで昇華されてより深く、極みに枯れすぎずに究極の結実を見せています。生の息づかいとは映像を通してとは違うけれども、DVDにはマルチアングルによってコンサートを聴くようにヴァントの後ろ姿を楽しむこともできますが、是非とも観て欲しいのは、ヴァントの指揮姿から音楽を読むというのだろうか、意図を感じ取っていく謎解きとも言える鑑賞法。ヴァントとブルックナーに浸っていくひととき、最後は大空の中に消えていくように終曲には何とも言えない、虚無とも違う爽やかさが残ります。 手兵だった北ドイツ放送響のライブでの緊張感とヴァントの白鳥の歌をお楽しみください。 また、シューベルトの未完成も逸品。甘すぎず、ただ一心に描いていくヴァントの究極美。
記念すべき日本公演の記録
日本では聴くことはできないであろうと思われていたギュンター・ヴァントの2000年11月の来日公演の録音。 年令を感じさせない緊張感と迫力、極めて集中力の高かった聴衆と誰もが納得する演奏会であった。聴いて後悔はしないと確信している。
BMGインターナショナル
ブラームス:交響曲全集 ブルックナー:交響曲第7番 ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱つき》[バイロイトの第9/第2世代復刻] ベートーヴェン:交響曲全集I〜第1番・第2番・第3番「英雄」 ベートーヴェン:交響曲全集II〜第4番・第5番「運命」・第6番「田園」
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